令和3年9月定例会 一般質問・答弁要旨

令和3年9月定例会 一般質問・答弁要旨

1.医療機関におけるオンライン診療の推進について

乙 黒 新型コロナウイルスが確認されてから一年半が経過し、新しい生活様式の普及が進む中、オンライン診療の優位性が注目されている。県では昨年度から電子版かかりつけ連携手帳と連動したオンライン診療の導入に向けて取り組んでいるが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止はもとより患者の受診控えによる医療機関の経営を改善していく観点等から今後も強力に取り組んでいく必要があると考える。また、オンライン診療は医療資源を効果的に活用していくことで、医師等が少ないへき地での医療や、必ずしも医師等が現地へ赴く必要のない在宅での医療において大いに威力を発揮すると期待できる。
一方で、オンライン診療は画面越しに患者と接するため得られる情報に限りがあり、設置に向けた手間がかかる等の理由により全国的に普及が進んでいない。加えて情報のやり取りや患者の個人情報の閲覧等に関し、最大限の対策を講じる必要がある。県では今後どのように取り組んでいくのか伺う。

長崎知事 県では、電子版かかりつけ連携手帳と連動したオンライン診療の普及を進めているが、この4月にアプリが完成し、現状、約40の医療機関に導入する。このアプリは患者の過去の診療情報等をオンライン上で確認することで、より的確な診断が可能となることから、他の医療機関に向けてもその優位性を丁寧に説明する中で更なる導入を図っていく。またオンライン診療は、感染拡大防止はもとより、医師の負担軽減や患者の利便性向上が図られることから、へき地医療や在宅医療を行う医療機関に向けても積極的に導入を促していく。 更に、このアプリでは日本医師会が医師としての身分を証明する「医師資格証」による電子認証を経ることにより、医師のなりすましを防ぐとともに、患者情報を厳格に保護していくことが可能であり、医師資格証の取得に際しては、日本医師会員が無料である一方、非会員は有料であるため、県が全額を負担して取得を促進することとし、所要の経費を9月補正予算に計上している。
 今後とも、県が主導的な役割を果たしながら、関係機関と連携を密にし、本県独自のオンライン診療を推進していく。

2.ヤングケアラーへの対応について

乙 黒 県はヤングケアラーの実態を詳細に把握し、今後の施策展開の基礎資料とするため、県内の小学六年生以上の全ての児童や生徒、支援者を対象とした調査を実施している。国の調査によると、世話をしている家族がいると回答した子どもが中学二年生の十七人に一人、高校二年生の二十四人に一人であること、このうち家族へのケアをする頻度は、ほぼ毎日と答えた子どもの割合が最も高い上、平日一日あたり七時間以上世話に費やしている子どもも一割程度いることが判明しているが、県内のヤングケアラーと思われる子どもの実態について概要を伺う。
また、ヤングケアラーという存在は認知されるようになったが、家族を世話すること自体が悪いこと、不幸なことではないということを丁寧に伝え、ネガティブな面のみに偏った発信とならないよう配慮する必要がある。同時に、子どもに自分自身がヤングケアラーであると認識してもらうことや、その後どのように行動すれば良いかを丁寧に発信することが最も重要であるが、子どもたちへの周知方法について伺う。

長崎知事 県が7月に実施した実態調査では、世話をしている家族が「いる」と回答した児童生徒が、全体で6.1パーセントおり、4月に公表された全国調査の5.1パーセントを1ポイント上回る結果であった。これらの児童生徒のうち、家族の世話について「相談した経験がある」ものは12.4パーセントであり、全国調査の23.8パーセントと比較して相談経験が少ない実態が見られた。また、相談したことがない理由について、「誰かに相談するほどの悩みではない」と答えたものが最も多く、「誰に相談するのがよいかわからない」、「相談できる人が身近にいない」といった児童生徒の存在も明らかになった。  山梨県は、子どもたちが将来への希望や期待を抱き、また、その実現に向けて挑戦できるような地であるべきだと考える。御指摘のとおり、子どもたちが家族の世話をすること自体は尊いことですが、他方において子どもたちが家族の世話を抱え込み、自らの未来を失ってしまうような事態は、なんとしても避けなければならず、そのためには子どもたちへの支援の周知が肝要である。このため、まずは、ヤングケアラーについての正しい知識を教え、該当すると思う場合には、躊躇せずに相談できる環境を整えることが重要であると考え、今回の調査においても、回答しながら自分の現状を認識できるようにするなどの工夫を行ったところである。また、調査に合わせ、我慢せずに身近な人に相談することを促すチラシを配布するとともに、今月には、学校を通じ、困り事に応じた相談窓口を紹介するリーフレットを児童生徒に配布した。今後も、相談することの大切さを説明する啓発動画の作成や、スクールソーシャルワーカーの相談体制の強化などを進め、ヤングケアラーが相談への一歩を踏み出し、支援につながるよう鋭意取り組んでいく。3.地区防災計画の策定状況と防災リーダーの育成について

6.県有地問題について

乙 黒 昨年の山梨県議会十一月定例会から、本年の六月定例会において、平成二十九年十月に提訴された住民訴訟を含む県有地問題について、様々な立場から激しい議論が行われている。私も県有地に関連して山梨県の見解や方向性について質問し、事前の情報や議員に対する説明が不十分であると感じる点はあるが、長崎知事を始めとする執行部からの答弁により県の主張や今後の訴訟に対する方向性については理解している。今後は裁判を通して、住民訴訟や富士急行との訴訟について争われていくが、その裁判結果を注視しながら、県として県有地に対する様々な施策へつなげていただきたい。

質問① 現在進行している住民訴訟、そして富士急行からの提訴と山梨県における反訴について、現時点での状況と今後のスケジュールについて詳細を伺う。

質問② 六月定例会において、富士急行に対して過去の不当利得返還請求を行う旨の説明があり、県として反訴することで損失を取り戻すことが決定された。その弁護士費用は県民感情からしても高額と感じる部分もあるが、得られる利益を旧日弁連報酬等基準で計算した場合には適切な対価であると説明もあった。私も県の主張が全面的に認められ富士急行からお金が支払われるのであれば、この金額についても全く問題はないと考える。一方で、県の主張が認められず、これまでの損失を取り戻すことができなかった場合には、これらの弁護士報酬が妥当であったのか議論がなされるべきである。県が考える適正な弁護士費用及び裁判費用について伺う。

質問③ 山梨県と富士急行の見解には相違があり、今後も裁判を通して争われていく。県は、過去の契約や様々な状況を精査する中で、その主張の根拠を示してきたが、裁判結果については絶対ということはなく、住民訴訟に係る検証委員会の中間報告書においても、報告書の内容は、裁判所等の第三者機関が同様の事実認定や法的評価を採用することを必ずしも保証するものではないと明記されている。今後、裁判結果が確定していく際には、県の主張がどの程度認められると考えているのか、また認められなかった際の責任問題をどう考えているのか伺う。

質問④ 県が考える県有地の活用に対する方針には多くの方が賛同していると考えるが、実際に県有地を借りている多くの組織や団体では、県の対応について不安を持っている方もいる。今後、県としてこうした利用者や県民にご理解いただくためにも、県有地の貸し出しに関する公平公正なルールの策定が必要だと考えるが所見を伺う。

総務部長

答弁① 損害賠償請求義務付け請求に係る住民訴訟について、令和3年9月21日までに16回の口頭弁論が開かれ、次回は令和3年12月14日に予定されている。原告の現在の請求は、令和3年8月23日に「訴えの変更申立書」が提出され、過去の知事に対する損害賠償請求は全て取り下げられ、補助参加人である富士急行株式会社に対する不法行為に基づく合計364億円の損害賠償及び適正な賃料を支払うことなく得た利得に対する不当利得返還の請求のみとなっている。
 富士急行株式会社が提起した債務不存在等確認請求訴訟及び、これに対し県が同社を相手に不法行為に基づく損害賠償等を求めて提起した反訴については、7月20日に第2回口頭弁論が行われ、次回、第3回口頭弁論は、10月26日に予定されている。

答弁② 弁護士費用については、議会への説明を経て策定した訴訟代理人弁護士の選任及び報酬に関する指針により定めているが、この指針は、弁護士費用を算定する基準として実務上広く用いられている旧日本弁護士連合会報酬等基準に拠っている。これは、令和3年2月議会で議決された修正予算案の審議の際、旧日弁連報酬等基準により弁護士報酬を算定することを前提としているため、県として指針を定めるに際しても、同基準に拠ることとした。裁判費用のうち主なものとなる反訴を提起する際の手数料については、民事訴訟費用等に関する法律により請求額に応じて金額が定められている。民事訴訟において請求額が多額となる場合は、債権額の一部を明示した上で訴訟を提起する一部請求が一般的に行われていることから、富士急行株式会社に対する反訴を提起した際も、請求の一部について先に請求することとし、多額となる手数料の出費を回避しているところである。

長崎知事

答弁③ 住民訴訟も、富士急行株式会社が起こした債務不存在等確認請求訴訟においても、県は元々被告であり、県民の利益を代表してその立場を主張していくべき責任を負っている。加えて、住民訴訟においては、原告は過去の知事への賠償責任追及を取り下げたが、これは中間報告に示されたところを踏まえてのものであると考えられることからも、既に裁判上の成果もあがっている。いずれにしろ県有地は県民全体の財産であり、同社が不適正な賃料での有効性を主張することにより、適正な賃料による負担を免れ、県有地の利用を継続している状態は、早急に正していかなければならない。

答弁④ 県有地の貸付けに関しては、地方自治法第237条はじめ、関係する法令や条例、規則に基づき行うことが大前提であり、その上で、社会政策上の必要性に基づく減免についても、公平公正で妥当な基準として明確化すべく、現在検討を進めている。その際は、適法な賃借人の正当な権利が確保されるべきは当然のことだが、県有地は県民全体の財産であることから、時代環境の変化に応じて行き過ぎた一部の特権的既得権に対し、県民生活向上のために是正・修正の手を入れるべきは、これもまた政治として当然であると考える。そうすることこそ、恩賜県有林を御下賜賜った御心に沿うものと信ずる次第である。

乙 黒

再質問① 富士急行への反訴について、必ずしも県が主張している現在の金額が、満額支払われるとは思っていない。弁護士が作成した検証委員会報告書にも記載されている通り、請求した金額が100%支払われるとは到底思えない。例え勝訴したとしても支払い金額が安価になった場合には、弁護士費用をもう少し安く設定すべきだったとの意見も出ると思うが、成功報酬を高額に設定するなど、県民の皆さんにも納得してもらえる契約の仕方があったと思うが、その点について伺う。

再質問② 県有地の活用に関する公平公正なルールの作成について、今後のスケジュールや作成手順についてもう一度伺う。これまでの特別委員会が廃止となり、今後の設置についても様々な議論があるので、こうした質問ができるのは本会議のみとなるかもしれない。こうした説明をどのようなタイミングで県民に対してしていくのか、今後の情報発信の仕方についても伺う。

総務部長

再答弁① 2月議会における附帯決議を踏まえ、旧日弁連報酬等基準に基づき算定した額よりも大幅に縮減する努力を重ねてきた。実際、旧日弁連報酬等基準に基づき算定した場合、本来6億円余を要するところ、1億4千万円余にまで縮減している。また、契約では反訴を含めた内容としており、反訴を提起する際に必要となる着手金を改めて支払うことがないよう定めている。結果として、約8億円余の着手金が1.4億円余に縮減されている。この予算に基づく契約については、旧日弁連等報酬基準を適用しつつ、できるだけ低い経費に抑えるとともに、報酬全体のうちの多くは、裁判を通じて具体的利益を実際に確保したときに成功報酬として支払うこととしている。

再答弁② 裁判に関するものについては、司法の手に委ねられているが、貸付のルールのあり方、賃料のあり方については、既に今も継続して貸付を行っているので、速やかに検討を進めていかなければならないと考える。また、議会の場がどのような場になろうとも、県有地の貸付については、県民全体の財産であると考え、きちんと県民の皆様に御理解いただける公平公正なルールとなるよう議員の先生方にも御意見を伺いながら進めていきたい。