令和4年2月定例会 一般質問・答弁要旨

令和4年2月定例会 一般質問・答弁要旨

1.JR中央線の利便性向上について

乙黒 峡東地域は、フルーツ狩りや登山、温泉など多くの観光資源を有し、JR中央線を中軸とする交通インフラにより、東京圏からの誘客にも優れた立地環境にある。持続的な地域の活性化を図るためには、特急列車の停車本数の増加や観光シーズンにおける臨時列車の増発など、中央線の利便性向上が重要である。また、中央線は、通勤・通学など、県民の日常生活においても主要な交通手段であり、県では、平成二十九年度から、県外の大学などへ自宅からの通学を支援する鉄道通学支援制度を実施している。この制度は若年層の県外転出の抑制効果を高める有意義で魅力的な施策であり、継続して取り組むべきだと考える。
そこで、県では、JR中央線の利便性向上に向け、どのように取り組んでいくのか、所見を伺う。

長崎知事 

中央線は、本県と首都圏を結ぶ重要な交通インフラであり、その利便性向上は人口減少対策を推進する上で必要不可欠である。このため、県では、山梨・長野両県や沿線自治体、経済団体などと組織する中央東線高速化促進広域期成同盟会や沿線9市との連携を通じて、JR東日本に対し要望活動を行ってきた。この結果、本年3月のダイヤ改正では、特急始発の発車時刻の繰り上げにより午前8時台の新宿駅への到着が実現するほか、特急列車の峡東地域3駅への停車や東京駅発着の特急列車が増加する予定であり、中央線の利便性が格段に向上する。
 また、県では、進学を契機とした人口転出の抑制を目指し、市町村と連携して、県外の大学等へ通学する学生の定期券購入費を助成しているが、この制度を来年度も継続して実施することにより利用者の増加にもつなげていく。今後も、あらゆる機会を通じて関係する皆様と力を合わせながら、中央線の更なる利便性向上に向け、積極的かつ粘り強く取り組んでいく。

2.ウィズコロナ時代の移住促進の取り組みについて

① U・Iターン就職の促進について

乙 黒 将来に渡る安定的な人口の維持や増加のためには、若者の定住人口を増やすことが何よりも重要であり、中でも県外の大学等に在学している多くの学生に県内企業へ就職してもらう必要があると考える。東京一極集中から地方分散への流れの中で、学生においても地元志向、地方志向が高まっている今こそU・Iターン就職の促進に取り組んでいくべきと考えるが、県ではどのように取り組んでいるのか伺う。

長崎知事 学生の地方志向が高まる一方で、コロナ禍で思うような就職活動が難しい状況が続く中、U・Iターン就職を促進するためには、多くの県外学生に県内企業への関心や接点をもってもらうことが重要である。このため、コロナ感染拡大当初、企業にアプローチできない学生の不安に応えるため、就職フェアや就職相談に、いち早くオンライン形式を取り入れた結果、やまなし暮らし支援センターの令和2年度の相談件数は、2,500件に倍増した。今年度は、企業のオンラインによる採用活動が浸透するなど、学生が就職活動に必要な情報を得られやすくなっているものの、相談件数は1月末で1,764件である。加えて、今年度からは、企業の様々な情報を効率的に収集できるオンライン企業研究会を就職活動が本格化する前の1月下旬に実施し、早期に県内企業に関心を持ってもらえるように取り組んでいる。今後は、学生への意識調査により、就職に対するニーズを詳細に把握した上で、県内企業とのオンラインマッチングなどデジタルを活用した就職支援を強化していく。更に、この調査をもとに企業誘致の在り方自体についても若い人たちが興味を持つような先進的で働きがいのあるスタートアップ企業に重点を置いて誘致することや、県内企業のさらなる高付加価値化などにより、魅力的な企業を増やし、U・Iターン就職を促進していく。

② 空き家を活用した移住促進について

乙黒 移住にあたっては、生活環境の大きな変化や思い描いていたイメージとのギャップへの不安もあることから、まずは、より多くの方に、山梨の暮らしを体験できる施設で、豊かな自然に囲まれた生活を肌で感じてもらうことが重要である。こうした施設の整備にあたっては、民間のノウハウも取り入れながら、空き家を資源として活用することが効果的であると考える。私は、令和2年9月議会において、官民が連携した空き家活用の取り組みについて質問したが、現在までの進捗状況について伺う。

県土整備部長 移住の促進には、コミュニティに入って地域の魅力を体験することが有効であるため、県では、昨年度から、民間事業者と連携して空き家を活用した事業の推進に取り組んでいる。具体的には、民間事業者が空き家を体験拠点として整備し、移住希望者と地域住民が交流できる体験事業を運営する一方で、県は整備に必要な空き家の情報提供や改修費の助成を行っている。これまでに20件の空き家で整備が進められ、運営を開始した5件では、延べ300名を超える方が山梨での暮らしを体験し、8割強が東京圏からの利用となっている。
 甲府市内の拠点を利用された30代の方は、農園での野菜の収穫や綿づくり体験を通じて地域住民と交流することで、山梨の生活に対する興味が高まり、季節を変えて再度の利用を検討されている。今後は、利用者の声や体験事業の魅力をSNSなどで発信して移住希望者へアピールするとともに、利用者の山梨への移住を促進するため地元自治体と連携して支援策を検討していく。

③ 効果的な情報発信について

乙黒 山梨は、都心からのアクセスが良く、豊かな自然景観、心あたたかい県民性など、移住先として全国でも屈指の理想の地であるが、人口減少に悩む他の自治体も地域資源を発掘し磨き上げ、東京圏の人びとに自分の地域こそが移住の地として最適地であると積極的に情報発信している。全国の自治体が生き残りをかけ情報発信にしのぎを削る中で、本県の発信した情報が東京圏の人びとに選ばれるため、どのように取り組んでいるのか伺う。

リニア未来創造局長 県では、「やまなし地域プロモーション戦略」に基づき、本県地域資源の「上質さ」や「先進性」をPRし、「やまなし」ブランド全体の価値を高めることにより、地域資源のブランド価値を更に向上させるという好循環の構築を目指している。移住・二拠点居住のプロモーションでは、情報発信力の高い文化人などに四季折々の山梨での過ごし方やその魅力などを、デザイン性の高い形で定期的に発信していただき上質性などを訴求していく。来年度は、このような点を踏まえて移住・定住総合ポータルサイトの再構築を図り、県のブランド力を向上させ、他地域との差別化を図り、移住者や二拠点居住者の増加につなげていく。

3.保育士確保に向けた取り組みについて

乙黒 幼児教育、保育の無償化や共働き世帯の増加、女性の社会進出などにより、保育需要は増加しており、保育士の確保は全国的な課題となっている。本県では、育児休業を終えた方などがスムーズに職場復帰できるよう、時期を問わず円滑に保育所に入所できる環境の整備「新たな姿の待機児童ゼロ」の実現に向け、市町村や保育団体などからなる協議会を設置して、対応策について検討を進めている。保育業界ではこれまで、口コミや保育士同士のつながりの中で人材確保が行われてきたと聞いており、今後の保育需要に対応するためには、人材確保のあり方についても工夫が必要である。
 他県では、公的機関が窓口となって登録された潜在保育士に対し、再就職に関する相談、斡旋をする、いわゆる保育人材バンクを行い、円滑な復職につなげている例もあるが、本県においても保育士確保に向け更に対応を強化していくべきと考えるが、今後どのように取り組みを進めていくのか伺う。

長崎知事 子育て世代の方々が、子どもの保育に悩みを抱えず安心して就業できる環境づくりは、山梨の基礎条件の一つであり、県政の重要な課題の一つである。県では、待機児童ゼロのセカンドステージとして、育休明けなどの希望する時期に、希望する施設へ円滑に入所できる環境の整備を進めているが、その実現には人材の確保が課題となっている。このため、関係団体や市町村とともに、有効な保育士確保策について協議を重ねる中で、学生の県内保育施設への就業を促すため、高校生・大学生向けの保育所見学会の開催や、保育団体が行う就職相談会への支援、資格取得と県内就業を促す修学資金制度の創設など、様々な取り組みを行ってきた。
 しかし、新しい姿の待機児童ゼロを実現するためには、年間を通して安定的に、経験豊かな保育士の就業を支援する仕組みづくりが必要であり、来年度新たに「保育士・保育所支援センター」を設置することとし、当初予算に所要の経費を計上している。センターにおいては、保育士人材バンクを創設し、潜在保育士の再就職に関する相談や保育施設とのマッチング支援等を行い、保育人材の確保を強力に推進していく。

6.GIGAスクール構想における教員の指導力の向上について

乙黒 GIGAスクール構想の実現は、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響もあり、全国的に当初の予定より早く一人一台端末やネットワークなど、ICT環境の整備が急速に進んだ。県内の小中学校でも、野菜の観察記録をプレゼンソフトにまとめたり、体育の授業では走り方を撮影し合って改善に役立てたりするなど、一人一台端末を活用した授業が始まるとともに、生徒会選挙において投票に使うなど、学校における活用の幅が広がってきている。
 一方で、「県公立小中学校 校長会」が実施したアンケート結果として、公立小学校の教員のうち、十八・七パーセントが授業で端末を使っていないという実態が掲載されるなど、教員のスキルや端末を効果的に活用した授業実践が課題となっている。同じ学校の中でも、クラスによっては、教員のスキル、あるいは慣れ・不慣れや得意・不得意などにより、端末の活用程度にばらつきがあると考えられ、これは学校間でも同様である。こうした中、どの教員も一人一台端末を活用した授業に取り組めるよう、教員の指導力を向上させていく必要があると考えるが、県の所見を伺う。

教育長 GIGAスクール構想により全ての小中学校に一人一台の端末環境が整備された今、全ての教員がICTを効果的に活用して、児童生徒の力を最大限に引き出せるようにすることは極めて重要である。県では、ICTの活用について、教員一人ひとりが取り組みやすいところから始めるよう指導しており、ICTに苦手意識を持つ教員についても、次第に慣れていくと考えている。
 また、県総合教育センターが開催する本年度の教科別研修会では、ICTを活用した自らの指導事例を素材とし、改善点などについて参加者全員で議論するといった、授業等で参考となる実践的な研修を行っている。更に、県内全ての小中学校でICTをテーマとした校内研修を実施しており、若手教員の推進チームによる模擬授業やアプリ活用の学習会、ICT支援員や民間事業者による研修会など、様々な取り組みが行われている。
 県としては、来年度も総合教育センターの研修の質及び量の両面からの更なる充実を図るとともに、学校現場での創意工夫を凝らした校内研修の実施を一層促すなど、教員の指導力向上に積極的に取り組んでいく。

7.日川高校グラウンドの人工芝生化の取り組みについて

乙黒 昨年の11月議会において、長崎知事より日川高校のグラウンド人工芝生化について前向きな答弁があり、クラウドファンディング型のふるさと納税という新たな手法での取り組みに大いに期待している。
 私の母校である日川高校は創立百二十周年を迎えた伝統校であり、質実剛毅の教育方針の下、勉学やスポーツにおいて様々な成果を残している。その中でもラグビー部の活躍は目覚ましく、年末年始に開催される全国高校ラグビーでは、16年連続51回目の出場を果たすなど、花園常連校として常に大きな期待を寄せられているが、近年ではなかなか上位まで勝ち残ることができず、伝統校としての指導において課題を抱えていると聞いている。一方、県内のスポーツ環境に目を向けると、山梨学院高校のサッカー部や日本航空高校のバレー部など、私立高校における充実した設備が、その素晴らしい成績の礎となっていることも事実である。
 日川高校の同窓会では、コロナ禍により延期となっている創立百二十周年の記念事業として、ラグビー部を中心としたグラウンドの人工芝生化を検討していたが、数億円にも及ぶ設置費用に加え、日常的な維持管理経費、定期的な張り替え費用が高額となることから、その計画を断念したと聞いている。私は、11月議会の答弁を受けて、日川高校にお伺いして萩原校長先生とグラウンドの人工芝生化について意見交換してきた。在校生は日常的に土のグラウンドで練習を重ねており、グラウンドの人工芝生化はラグビー部等の激しい練習におけるケガ対策になるとともに、各種大会におけるコンディション調整にもプラスになると大変期待していた。公立校においてグラウンド整備が進められた場合には、休日における地域住民の利用等も検討する中で地域に根差した高校として運営されたらどうかと提案したところ、教育委員会と相談する中で様々な工夫をしていきたいと前向きなご意見をいただいた。また、芦沢同窓会長からもご意見をいただき、県からの申し出には大変感謝するとともに、新たな取り組みについても全面的に協力すると前向きなお答えをいただいた。
 グラウンドの人工芝生化には多額の事業費を要するなど、事業の実施に向けては、様々な課題があるが、今回の取組に関して、県では先行事例となるべくどの様なプランで進めていくのか伺う。

教育長 県では、伝統ある日川高校ラグビー部の練習環境を充実したいという同窓会の熱意と意欲をしっかりと受け止め、一体となって事業を進めたいと考えている。事業の進め方としては、学校や同窓会などの方々と協力して、事業計画の策定とクラウドファンディング型のふるさと納税などを活用した資金募集を行い、県において事業化することを考えている。このため、現在、事業規模や整備内容、事業費、資金確保のための協力体制など、詳細について検討しているところであり、今後、学校や同窓会などの方々と具体的な協議を行っていく。
 人工芝生化は、利用が天候に左右されにくくなる、ケガの防止に効果があるなど、教育環境の充実に資するものであり、ラグビー部の強化だけにとどまらず、学校の魅力向上、地域の活性化にもつながるものと期待している。日川高校グラウンドの人工芝生化が、県と学校や同窓会などがともに汗を流し、県立学校の魅力向上を図っていくリーディングケースとなるよう、その実現に向けて、しっかりと取り組んでいく。

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